―――第6巻の読者からの反響はいかがでしたか?
伏見つかさ(以下、伏見):実はもう結構前の事なので忘れているんですけど、よかったはずです。
三木一馬(担当編集):(評判は)よかったですね。ただTwitter逆書評が弊害にもなっていていると言いますか……。「作品の感想を書くにあたって、安易にdisると桐乃からのコメントが怖い」と思われているのか、投げっぱなしの罵詈雑言というのが無くて、皆さん、ちゃんと書いてくれてるんですよ。そうなると必然的にある程度良い評価が増えてきまして。ありがたいことなのですが、個人的にはそういったことに振り回されない、フラットなご意見が欲しいですね。
―――第6巻では、リア・ハグリィの話が印象的でした。
伏見:ありがとうございます。過去の桐乃を想起させたり、京介の記憶を刺激させたり、比喩として上手く機能してくれたと思っています。
三木:そう、リアがいたから色んな角度から桐乃と京介の関係性が見えてきましたからね。もしも次に登場するとしたら、リアに正式に視点が置かれたお話になるので、リアのキャラ人気はその時、真価が問われるんだと思います。
伏見:あやせにしろ、瀬菜にしろ、リアにしろ、新キャラは必ず何らかの役割を持って登場しています。一旦役割を終えて再登場させるときが、キャラの魅力を描くチャンスだと考えています。
―――沙織の正体が判明されましたが、ifの可能性として京介と沙織ルートはあるのでしょうか?
伏見:秘密です(笑)
三木:伏見さんが『俺の妹』のキャラの中で好きなのは沙織って言っていませんでしたっけ?
伏見:そうですね。お気に入りではありますけれど、自分の好き嫌いでひいきはしません。一番出番の多い桐乃は、いまだに大嫌いです。
―――まだ!?(笑) あれだけデレるようになったのに、まだやっぱりムカつく女なんですね。
伏見:腹立つくそがきだと思っています。私が桐乃のことを好きになるときは、『俺の妹』が終わる時かもしれないです。
一同:おおー!!
―――桐乃が初期からだいぶデレていますが、今の二人の関係性の変化は予想されていましたか?
伏見:初期段階ではまったくしていませんでした。1巻で終わると思っていましたし。2巻を書いていたときは2巻で終わると思っていました。3巻を書いているときは4巻で終わると思っていました。私の中ではっきり変わったのは、4巻ラストの展開について激しく話し合ったときで、「やべぇ! この話はまだまだ続くぞ、どうしよう」と。ストーリーをある程度先まで考えて決めたのも、そのときです。
三木:ありがたいことじゃないですか(笑)
伏見:毎回、これが人生最後に書く本かもしれないと思って書いています。もちろん「続く」で終わったときは、命に代えても続巻を書き上げますが。
11月10日発売 俺の妹がこんなに可愛いわけがない第7巻
■あのヒキから7巻はどう展開する!?原作版『俺の妹』
―――第6巻の最後が気になるセリフで終わってまして、それが第7巻の冒頭で明らかになるのですが、この一章についてお聞かせください。
伏見 :6巻ラストの引きから、誰もが容易に想像できるベタな展開にしました。ただし……(ネタバレになってしまうのでカット)。二人の関係や心境がずいぶん変わりましたので、3巻のデートシーンと比較していただくと面白いかもしれません。
―――また今回も取材されましたか?
伏見 :ほぼ地元なので取材する必要がないです(笑) ゲームセンターとか内装は弄りましたけど、付近に住んでいる方ならだいたいあの辺だなぁってわかるはず。桐乃行きつけの映画館はここかな、と、地元の読者さんは推理してみてください。
―――今回出番が増えたのが新垣あやせです。第二章の京介は伏魔殿とか言いながら、なんで入っていっちゃったんでしょうね。
伏見 :きっと、あやせの声を聞くと頭おかしくなるんですよ。
一同笑い
伏見 :ドラマCDの第三話がやたらとウケたので、じゃあ本編にもちょっと反映させてみようかなと。
―――気になったのがあやせのプリクラシールなんですが、なぜ彼女はあれを持っていたんでしょうか?
伏見 :ある日の深夜、京介の部屋に窓からそっと忍び込んで持って行ったんですよ。
■取材の成果!?サークル参加の経験を反映
―――京介たちが今度はコミックマーケットにサークル参加します。伏見先生も今年の夏コミでサークル参加されていましたが、ご自身の経験がフィードバックされた描写や箇所はありますか?
伏見 :もちろんありますよ。朝、一般参加者は東京ビッグサイトからグルーッと回って駐車場に並ばされるんですけど、サークル参加だとそのまままっすぐ行けるところだとか、朝の挨拶周りも、作中と同じくらいの時間に行きました、ノトフさんには会えなかったですけど。
ノトフ:そうなんですか! 僕も挨拶回りしてました、サークル同士だとよくあることですよね、すみません。
伏見 :そうでしたか。そういえば、私の同人誌にノトフさんのコスプレ写真コーナーがあるんですよ。
―――あのシーンの元ネタは、ノトフさんのコスプレ写真コーナー?
伏見 :いえ、あらかじめ書いてあったシーンなので順番が逆ですね。同人誌作りの過程で、グラビア撮影のディテールについて、ノトフさんに取材させていただきました。
平和 :足下にマットを敷くシーンもあったんですが、これは伏見先生の隣スペースだった大手サークルさんのことですよね? 実はこれって、あまり一般的じゃないんじゃないかなと。
三木:普通は座れる?
平和 :座れますし、たくさんのサークルが集まっている島中では、人が常にガシガシ出入りするので、汚れちゃうと思います。
伏見 :もうちょっと早く言ってださいよ!
一同笑い
伏見 :サークル参加したものの、わけあって島中サークルの取材はできなかったので……申し訳ない。
―――コミケ2日目に部活でサークル参加する話は、別の機会で語れればみたいになっていますが、それも読みたいです。
伏見 :書く予定はあるんですけど、第7巻と第8巻の間に短編集をいれたら読者が怒るでしょう。
三木:ですね(笑)。入れ込むタイミングはともかく、僕も出したいと思っています。伏見さんの真骨頂である、短編集で切れ味がいいスタイルを活かせればと。
インタビュー中のかーずと平和
■まさかの展開!読者を揺さぶる第4章
―――第4章は御鏡光輝さんが衝撃的で、またかなり反響が多そうですね。
伏見 :さじ加減には気を遣いました。
三木:今のユーザーさんの風潮として、こういうのには過敏です。とてもユーザーさんが繊細でもあるのも承知しています。でも、(タブーに触れてでも)斬り込んできたのが、このシリーズじゃないかと、個人的には思っています。
―――なるほど。
三木:しかしそれはコンセプトだけであって、細かいところのさじ加減は、伏見さんの仰ったように、大変気を遣わなければならないと思っています。自分達はエンターテインメントを作っているのであって、読者の皆様に不満感を持って読んでいただいても、意味が無いですから。(御鏡に関しては)大変なチャレンジだと理解はしつつやっています。
伏見 :本当はもっとキツい展開にもできたのですが、「俺の妹」では、これがギリギリだと判断しました。
平和:京介と親父さんが別室でやさぐれるシーンがあるじゃないですか、あそこの感情移入度合いはかなり高かったです。
三木:そこは、桐乃を愛してくれているっていうことですよね。
平和:いや、本当はあまり桐乃が好きじゃないはずなのに、何でこんな俺はお兄ちゃんと一緒に凹んでるんだろうって。まさに、桐乃がこんなに可愛いわけがない!
かーず:分かる!分かる!
一同笑い
三木:これ、絶対作戦通りですよ!(笑)
―――今巻も衝撃的なラストなんですけども、買い物に付き合うとか、そういう意味なんですか?
三木:それじゃ前回とほぼ一緒じゃないですか!(笑)
伏見 :「前回と同じパターン」と思われてしまうのはまずいので、確定させて終わらせました。
三木:これに関しては小原(※小原一哲氏。もう一人の担当編集)と珍しく結構意見が真っ二つに別れました。
―――ここで関係性を一気に動かしましたね。
伏見 :物語は、終わりに向かって走っている時が一番面白くなるんですよ。第1巻もそうですし。第4,5巻あたりもそうで。話が動いていく時が面白くなる。なので別に出し惜しみする必要はなくて、がんがん切り札をきってしまっていいんじゃないかなと思っています。
―――いやいや! 第7巻を読んでいると、「このシリーズ、もうすぐ終わるのでは?」って、クライマックスに向けて話が動いている雰囲気がします。
伏見 :先ほども言いましたが、私が本を出せるのは奇跡のようなもので、悔いの残らないよう、常に最終巻、あるいは最終巻間近であるという心構えで書いています。
―――最後に、読者の皆さんへ第7巻のお奨めポイントやメッセージをお願いします。
伏見 :桐乃と京介のお互いへの心情に注目していただけると嬉しいです。
三木:自分的な注目ポイントは中盤のお話で、伏見さんのファンキーな面というか、純粋にエンターテインメントを描いているエピソードが挿入されているので、そこが良いと思っています。いわゆる恋愛ものですと、ここまで進んでくるといつもの関係性が成立せずに、ちょっとシリアスになったりする事もあるんですけど、そこを感じさせない、みんなに笑って欲しいっていう明るい想いが凄く詰まっているので、そこは是非読んでもらいたいです。
伏見 :アニメに負けないようにがんばります!
―――本日はありがとうございました。